備忘録として #4

さて、ここで話は突然ではありますが、1985年1月17日の午後3時、場所は立命館大学キャンパス内清心館2階日本史共同研究室の一角、とまぁ、きわめてしみじみと身近な話題へと入ってゆくあけでありますね。そして、その日、この研究室の一角では日本史を専攻する五名の学生が、様々な資料の置かれたテーブルを囲んで熱い議論を交わしていたのである。―と、このように書くと、なんとなく今後わが国の将来をしょって立つ若き有能な青年たちが、混沌とした目下の社会状況を憂い、歴史学的視点から、正しいわが国のあり方および今後、改良すべき課題についての検討会、というようなかんじで、「なんだ、なんだ なんだ」、「だんな だんな だんな」とほとんどわけのわからぬ人々であるようなのだけれども、ほんとうは実にくだらない旅行の話をしていたのである。
それで、そこに集まった五名の学生というのがCゼミの今村正寿およびBゼミの川口敬二、湯浅智之、そしてDゼミの小野敦と私、といった別にどうということもない連中なのである。もっとも集まったといってもだれかが招集したということではなく、その日が今年度提出レポートの締切日で、皆さんお互いに無事レポートも出しましたし、ひとまずは、まぁ、いっぷくして雑談でもしましょうか、ああそうしましょう、そうしましょうと、実に自然に"ひとときのいこいをともに過ごす臨時雑談友の会第一回会合"のようなものができたのですね、しかしながら、この別にどうでもいいような連中が、それから約2ヶ月後、実に恐るべき驚異と戦慄、へべれけかつハチャメチャな、冬の北海道一周旅行という、実に正しくない大学生の旅行にワッセワッセと出かけてゆくことになろうとは、僕は思ってもいなかったのである。


森茂樹「川口探険隊北海道をゆく」