災害時の窃盗犯罪の厳罰化

NHKのニュースによると自民党公明党が「やむをえず住民が避難している住宅などに盗みに入るのは悪質で、許されない」として災害時の窃盗犯罪の厳罰化を検討しているらしい。具体的にどの程度厳罰化するつもりなのかニュースでは明らかではなかったが、一時の感情に流されて厳罰化することには反対だ。
東日本大震災ではどうだったのだろう? 被災地での窃盗は他の地域よりも重い量刑だったのだろうか?
ちなみに窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金だ。被害金額、前科の有無、悪質性などによって量刑の相場があるのだろうが、懲役刑となった場合は3年以下の刑期になることが多いらしい。
東日本大震災 窃盗」で検索すると「被災地での窃盗 福島 - 東日本大震災でやらかした人まとめWiki」がヒットした。そこにまとめられた記事の多くは容疑者が逮捕されたものだったが、有罪判決の記事が2件あった。懲役2年・執行猶予4年(求刑懲役2年)、懲役2年10カ月(求刑懲役3年6カ月)。量刑の相場は知らないが、被災地での窃盗が厳しく処罰されているという印象ではない。
では悪質性を考慮していないのかといえばそうではない。判決で裁判官は「震災の混乱に乗じて被災地に対して傷口に塩を塗りこむようなものだ」、「東日本大震災原発事故の後、バールと懐中電灯も準備して福島まで赴いている。計画的で悪質な犯行だ」と述べている。悪質性を考慮しても法定刑の上限の半分にも満たない刑期なのだ。もちろんこの数年間で国民の意識が変化して厳罰化を求めるようになった可能性もあるが、まさか窃盗は死刑にすべきとは考えていないだろうし、ほとんどの国民が現在の法定刑さえも知らずに言っているだけだろう。とりあえず現状のままで懲役10年の求刑で充分ではないかな。

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福島第一原発から半径30キロ圏内にあり、屋内退避区域となっていた福島県南相馬市で3月、電柱から電線を盗んだとして、窃盗罪に問われたプロ野球福岡ソフトバンクホークスの元選手で、宮崎市の廃品回収業伊奈龍哉被告(23)ら2人の判決が27日、福島地裁であった。
加藤亮裁判官は「震災の混乱に乗じて被災地に対して傷口に塩を塗りこむようなものだ」と述べ、両被告に懲役2年、執行猶予4年(求刑・懲役2年)を言い渡した。
(後略)

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震災後に盗み目的でいわき市富岡町の住宅に侵入したとして、窃盗や邸宅侵入などの罪に問われた住所不定、無職小田泰久被告(23)の判決公判が12日、福島地裁であった。加藤亮裁判官は懲役2年10カ月(求刑懲役3年6カ月)の有罪判決を言い渡した。判決によると、小田被告は仲間と共謀し、昨年4月にいわき市の住宅に侵入し現金や指輪など計約150万円相当を盗んだほか、富岡町では盗み目的で住宅に侵入。JAふたば富岡支店の現金自動出入機(ATM)を壊し、現金を盗もうとした。加藤裁判官は「東日本大震災原発事故の後、バールと懐中電灯も準備して福島まで赴いている。計画的で悪質な犯行だ」と述べた。
(後略)