ベーシックインカム

夏休みや年末年始に空港でインタビューを受けた子供が「ハワイ!」などと答えているのを見て思うのだが、「子育てにはお金がかかる」という人がいるが正しくは「贅沢するにはお金がかかる」ではないだろうか?
さて、ちくま新書 赤川学 著「子どもが減って何が悪いか!」を読んだ。


社会学者である赤川は「三木は、配偶者控除を専業主婦優遇とみなすジェンダー論の立場には、『健康で文化的な最低限度の生活』を保証するのが基礎控除(すべての納税者が総所得から差し引く控除)の役割であり、配偶者控除もそのひとつであるとの観点から反対する。専業主婦は無所得者であり基礎控除を利用できないから、代わりに妻の最低生活費を負担している夫から配偶者控除を行うことには正当性があるというのである。正論である」(pp.106-107)と書いている。(三木とは、岩波新書「日本の税金」の三木義一)
しかし、控除対象配偶者は専業主婦だけではない。パート主婦も対象だ。給与所得者であっても年間の給与所得が38万円以下であれば配偶者控除の対象となる。給与所得は、給与収入から給与所得控除額(最低65万円)を差し引いて算出するので、給与収入が103万円以下であれば配偶者控除の対象となる。そして、当然だが、給与所得が38万円以下であっても基礎控除(38万円)は差し引かれ、課税所得は0円、所得税はかからない。
配偶者控除は専業主婦優遇ではないかもしれないが、パート主婦優遇であることは間違いない。


もし「健康で文化的な最低限度の生活」を保証するのが基礎控除の役割であれば、収入がまったくない者には年間38万円を支給すべきではないか? 生活保護の支給額は一人当たり年間38万円でよいのではないか? いっそ基礎控除生活保護も廃止して、全国民に一律に年間38万円を支給してはどうか? と思うのだ。
しかし、最低限度の生活を保証するのが基礎控除の役割という考え方は誤りではないかと疑問に思った。なぜなら額が少なすぎてとてもそんな役割は担えそうにないからだ。そこで基礎控除額について調べてみると、消費税分の上乗せを除けば金額は30年以上も据え置かれているらしい。さらに検索すると、「目から鱗の所得税基礎控除の変遷」がヒットした。それによると「1965年の基礎控除は127,500円。当時基礎控除額の算定に当たっては、大蔵省メニューという成人男子が健康な身体を維持できる為の献立を基に一年間の食費を算定し、次にエンゲル係数で除して最低生活費を求めていた」、「驚きに輪を掛けたことは、それ以前の計算方法である。それはマーケットバスケット方式と呼ばれ、その名のとおり最低生活に必要な飲食物・衣料・入浴料・理髪代等の品目を一つ一つ積み上げて算出した」そうだ。もともと最低限度の生活を保証するものというのは本当だった。
ちなみに1965年の大卒男子の初任給は24,102円(大卒初任給の推移)。仮に現在の大卒初任給が20万円なら1965年の8倍以上だ。1965年の基礎控除額を8倍すると100万円を超える。生活保護の支給額だが、生活保護費は世帯単位で支給され、家族数、年齢、地域などによって異なる。高齢者単身世帯、67才、札幌市の場合、生活扶助は7万7千円くらい。さらに必要に応じてその他の扶助(住宅扶助、医療扶助など)が支給されるが、生活扶助だけで年間92万4千円くらいだ。
基礎控除配偶者控除、扶養控除などを廃止し、大幅に増額した金額をベーシックインカムとして支給してもよいのではないかな? 少なくとも基礎控除の増額は要求するべきだろう。
子育てに必要なお金もそこから出せばいいじゃん。