不当な差別

千田有紀自民党LGBT法案――女湯問題は『デマ』なのか、『不当な差別』とはどういう意味なのか」https://news.yahoo.co.jp/byline/sendayuki/20230605-00352509

 

「不当な差別」という表現について「憲法学では、合理的な区別と不合理な差別を分けることが通説であり、不適切とまでは言えない」という法学者の発言を新聞記事から引用して、「ある特定の事由を理由として、あるべき取扱いと異なった取扱いをすることが差別と呼ばれているようであり、日常語に込められるよりは『非難』のニュアンスは薄いようだ」と述べている。「あるべき取扱いと異なった」はネガティブなイメージが強くて、「非難」のニュアンスは薄くないと思う。

(新聞記事の法学者の発言は「『差別』という言葉は価値中立的で合理的な差別と不合理な差別に分けることが通説だったので、必ずしも不適切とまでは言えない、現在、合理的な差別=『合理的な区別』、不合理な差別=『差別』が使われることが多い」を新聞記者が雑にまとめたのではないだろうかという気がする)

 

「『不当な差別』という文言が使われているのは、この法案だけではない。上記の指摘通り、ヘイトスピーチ解消法に『不当な差別的言動』という文言がある」と述べているが、「不当な差別」と「不当な差別的◯◯」は同じではない。「不当な差別的言動」で不当なのは「差別」ではなく「言動」だ。

「不当な差別的」という文言が使われている法律は67件。(「不当な差別的」を除く)「不当な差別」という文言が使われている法律は4件(人権教育及び人権啓発の推進に関する法律、個人情報の保護に関する法律公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)。なお、「差別」という文言が使われている法律は185件。「不当な差別」と「不当な差別的」を単純に引き算すれば114件。「『不当な差別』という文言が使われているのは、この法案だけではない」は嘘ではない。嘘ではないが少数だ。もし多数であったとしても、それは法案を修正する理由にはならないだろう。なぜ「不当な差別」でなければならないのか?「差別」ではどのような不都合があるのか? それを説明すべきだ。

 

さて、「差別は許されない」という文言が使われている法令は1件(部落差別の解消の推進に関する法律)、「差別はあってはならない」は0件。「差別はあってはならない」という文言が使われているのは、この法案だけなのだ。「『不当な差別』という文言が使われているのはこの法案だけではない」から正当であるのなら、「差別はあってはならない」という文言が使われているのは他にないので、この法案の正当性が疑われるということでよろしいか?